先日、しとしとと雨が降る中、裾合平経由で姿見から黒岳まで歩いたときのこと。
お鉢平の稜線に出た瞬間、今まで経験した中で一番強いんじゃないかというくらいの猛風に見舞われました。風速計は持っていませんでしたが、感覚的にはこの日を悠に上回っていました。つまり平均風速で20m/s以上。強風の中歩くことには比較的慣れているはずなのに、踏ん張っていても体が登山道外に押し流されていくほどでした。口の周りの空気が薄くなり、呼吸が苦しい感じすらしました。
この日は気温も低く、麓の旭川市でも最高気温17.5℃にしかなっていません。一般的な気温低減率で計算すれば、標高2000m以上の稜線では、最高気温で5℃前後。
雨・風・低温。見事に三拍子揃ったわけです。普段の服の他に、長袖の下着上下と長袖の上着を着こみ、もちろん雨具も着ていましたが、黒岳石室に着いたときにはすっかり体が冷え切っていました。かなりペースを上げて歩いて体温を上げてきたにもかかわらず・・・。
これが7月の大雪山です。大雪山の寒さです。たとえ本州で猛暑日を記録するような日だとしても、北海道の高山帯では氷点下にまで気温が下がる可能性があります。真夏であってもダウンジャケットは必須ですし、魔法瓶にお湯は入れておかなければなりません。それが大雪山なのです。
昨日から今日にかけて、大雪山系で遭難が相次いでいます。いずれも本州からのツアー登山だそうです。地元の私たちですら“妙に寒い”と感じるこの気象条件ですから、大変厳しい状況に置かれていることは想像に難くありません。皆さんの無事を祈っています。
それにしても、2002年の大量遭難のときの教訓がまったく活かされていないことには衝撃を受けます。北海道の気候が本州とは別物であること、大雪山の高山帯が逃げ場のない吹きさらしであること、最奥部に入れば営業小屋はおろか避難小屋すらまばらであること、こういった注意すべき諸々が忘れられているのではないでしょうか。
確かに大雪山には山岳的な険しさはなく楽々お散歩気分で歩けるかもしれません。でも、気象について言えば国内屈指の厳しさがあります。普段はその厳しさが隠れているだけ、ということを、特に道外から来る方は肝に銘じておいて欲しいと思います。もちろん私たち地元の人間も。
自戒を込めて。
5 件のコメント:
悲惨な遭難のニュースが飛び込んできて驚いております。
標高2000m級の大雪は本州で云うならば3000m級に匹敵しますよね。
いくら夏山と云えども、高山の頂上は、低温になる可能性大ですよ~。
ダウンもいりますよね。
天候が悪ければ、悪いほど尚の事・・・
今回、天候が悪かったにも関わらず登山したのですね。
何故、ガイドさんが3名も付いていながら強行軍に登山したのでしょうね。
知ってるツアー会社だけに、どうにかならなかったものなのかと残念でなりません。
私達が縦走した時も霧雨で寒かったのを思い出します。
場合によっては本州の3000mよりも厳しい気象になるかもしれませんね。
停滞の判断、日程を延ばす判断はとても難しいものです。でも、それをできてこそのガイドだとも思います。
我が身を省みる一日です。
こんばんは
今日は悲しいニュースで残念。
10名もの犠牲者を出した山岳事故は希に見る悲劇だと思います。
同じ失敗を繰り返さないよう、改めて判断ミスを犯さぬよう肝に据えて欲しいものですネ。
亡くなられた方々に哀悼の意を表しつつ、ご冥福をお祈りいたします。
2002年と全く同じことを繰り返しているというのがなんとも・・・
今日はニュースを見るたび胸が痛みます。
2002年の教訓、土栄さんの口頭試問に答えられるかな、と考えてみると、どういう事案だったか記憶がおぼろげです。
本件に関する評価対策はいくつか浮かぶのですが。
今回の遭難に関連して、家庭や職場で、あなたは大丈夫なの、と聞かれた(る)方は多いと思います。
それに対して、十分な説得力をもって答えられるか、何より実際の場に臨んで適切な行動が取れるのか、私はちと考えてしまいました。
2002年の遭難についてネットで検索すると、要領良くまとめたページがありました。
さらに、山渓の羽根田治著「ドキュメント気象遭難」が紹介されていたので、早速旭川市図書館で借りて読んでみました(図書館には1冊しかないようです。速やかに返しますのでお待ちください)。
この本、事実経過は詳しいですが、分析評価はもっと突っ込んで欲しい、対策は明瞭に述べてもらいたいという感想は、横着でしょうか(自分で考えなさいということか)。
本件については、継続して事実調査、分析評価を追いかけて行きたいと思います。
因みに、私は家族に何も聞かれませんでした。これって信頼の証し?それとも・・・。
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