過日たまたまテレビで見ていた「日本アカデミー賞」の授賞式で、山崎豊子原作の『沈まぬ太陽』が作品賞を受賞した。偶然とはいえ感慨深いものがあった。
以前『旭岳通信』に書いたことがあるので、旭岳ファンクラブの会員の方はご存知かもしれないが、この作品の主人公・恩地元(おんち・はじめ)のモデルになった元日本航空ナイロビ支局長・小倉寛太郎(ひろたろう)さんには実際にお会いしたことがある。
二十代の終わりにアフリカをブラブラしていた頃、おカネがなくなると居候させてもらっていた日本のNGOが経営する孤児院「希望の家」の子どもたちに、ちょっとした登山をさせようという試みに、孤児院のパトロンだった小倉さん経由で、日本航空にスポンサーになってもらったのだ。たまたま山ヤだった私がリーダーをすることになった。いま思えばこれがはじめてのガイドだったかもしれない。
打ち合わせということで、当時住まわれていたナイロビ郊外のご自宅に招かれ、ごちそうになった覚えがある。きのうの授賞式で同時に主演男優賞を受賞した渡辺謙氏が「この作品は“矜持(きょうじ)”というのが1つのテーマになってました。」と語っていたが、それに加えて「気骨」ということばがふさわしい方だった。比較的若くして鬼籍に入られてしまったが、ご存命であれば、この映画、そして、いまの日本航空についてどのようなことばを語られただろう。
1985年の日航機墜落事故、2005年のJR西日本の脱線事故、さらには去年のトムラウシでの大量遭難と、本来最優先であるべき「安全」が、二の次三の次にされた結果起きてしまう悲劇……。われわれも他人事ではない。この映画を見て、「安全」そして「矜持」ということばを噛み締めてみたい。
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