2012-02-02

広報『ひがしかわ』2月号

連載の最終回。今回は登山道についてです。
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   ”八方ふさがり”の登山道

 「大雪山は登山道が整備されていない」と、本州から来られたお客さんによく言われる。しっかり整備されて迷う心配もない本州の「百名山」コースばかり歩いていたら、大雪山の登山道が良くないと感じるのは当然かもしれない。
 本州の登山道が歩きやすいのは、山小屋が登山道を整備しているからだ。ヘリコプターによる荷揚げが一般的ではなかった時代、山小屋に物資を運ぶのは人力が頼りだった。そのため登山道は、登山者が歩くだけではなく、山小屋にとっては「生活の道」でもあったし、「道が悪い」という悪評が立てばお客離れも進むので、「道直し」は山小屋の重要な仕事の一部になっている。
 ところが大雪山では、前回述べたように、営業目的の山小屋が一軒しかない。そのため、国内最大の22.6万haの面積を誇る大雪山国立公園の登山道整備は行政の手にゆだねられている。もちろん行政もそれなりに努力はしているのだが、弱小官庁(失礼!)の環境省や、巨額の債務にあえぐ我が北海道では、登山道整備にまわすおカネや人材は限られてしまう。下手をすると行政仕分けの対象になりかねないご時世でもある。野球やサッカーのように大きなおカネが動くことのない登山のような営為には、日本の行政は基本的に冷淡だ。八ッ場ダムに使うおカネはあっても、登山道整備におカネを出すなど論外なのかもしれない……。
 悪い話はさらに続く。一昨年・去年と続いた洪水災害で、主要な登山口へつながる林道が数カ所寸断され、いまだに復旧されていない林道もいくつかある。森林管理署にしてみれば、施業計画(木を切る予定)のない林道を修復しても意味がない、ということになるが、登山者にとっては、登山口へ行きつく手前で門前払いを食った形だ。この状況を放置すると、登山者の減少が今後も続くことが懸念される。
 残念ながら、気候変動によると思われる集中豪雨傾向はここ数年顕著になってきており、登山道も林道もあちこち傷だらけ、まさに「八方ふさがり」の状況だ。大雪山は受難の時代に入ったと言っていいだろう。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

確かに、普段からいうと甘口ですね

「いいじゃないですか?これで秘境が回復しますよ」というのは、極甘?
「破壊された自然は二度と回復されない」は?

今のCMはおもしろかった
星飛雄馬が何か言っていて、歌が「選べる自由 ・・・」と

SAKUMA Hirosi さんのコメント...

「秘境が回復」する前に、我々が干上がってしまうのも困るので……(冷汗)