11月29日(土) 曇り時々雪のち晴れ
強風が吹き荒れ濃霧があたりを覆った昨晩。その激しさは早めに行動を終えて良かったと胸をなで下ろすほどでしたが、同時に翌日の天気が心配になりもしました。もう何日も前から「週末は晴れる」だの「行楽日和の土日」だのと天気予報で言っていて、たいへん期待しているのですが、こんな状況で本当に当たるものやら・・・。一人寝袋にくるまりながら無性に弱気になります。
しかしそれも杞憂に終わりました。朝テントから出るとこの日の出。朝の低い太陽が東の雲を朱に染めています。夜と朝、山と雲との狭間に浮かぶ幻想的な瞬間。気がつけばカメラを小脇に抱えて走り出していました。もっと景色の良いところへ!
朝焼けの時間は儚く終わり、徐々に高くなる太陽は、今度は谷を埋める雲海を照らしだしました。さっきの風景が派手な色合いで魅せたなら、この風景は侘び寂び的静寂さの魅力で攻めてきます。しかも雲は動かないようでいて、よく見ると刻一刻と姿を変えいつまでも飽かせません。そのわずかな変化を見たくて、歩きながらもついついよそ見をしてしまうのです。
さっき朝焼けを演出した黒く低い雲は、時間が経つにつれどんどん南に流れていき、密度が低くなっていき、青空が見え山が見え。うはは、いいぞいいぞー。
そしてついに!寒風山を越え笹ヶ峰に取り付いたあたりで瓶ヶ森を目にすることができました。二日前に泊まったあの山を、深い谷を隔ててはるか彼方に見られたのです。
さらにさらに、昨日からずっと雲に隠れていた笹ヶ峰も、ようやくその頂をあらわにしてくれました。二日間ちまちま歩いてタイミングを合わせた甲斐がありました・・・。この山を晴れた日に歩きたかったんですよ。だって、なんだかゆるやかでしょう。見晴らしがいいでしょう。
笹ヶ峰山頂から歩いてきた方向を眺めます。手前に寒風山、その後に伊予富士。さらに後は東黒森とジネンゴノ頭。
これから歩いていく方向。左にちち山、そこから一旦下って冠山・平家平と続くゆるやかな稜線。
ちち山を越えてちち山分かれに到着しました。ここで二者択一。さっき見た冠山・平家平方面に行く道と銅山越方面に行く道とが分かれていて、そのどちらに進むか決めなくてはならないのです。またそれは、どこへ下山するか何泊するかを決めることに他なりません。
冠山・平家平のほうに行けば、標高が高く緩やかな稜線を長く歩けますが、今日のうちに下山することになります。一方、銅山越方向へ行けば、標高ははるか低くへ下ってしまいますが、山中でもう一泊することができます。つまり標高を取るか泊数を取るかの選択です。
標高より泊数の魅力が勝り、私は銅山越へと向かうことにしました。登山道は標高差500mを一気に下り、高山帯から樹林帯へと私を連れ去っていきます。見晴らしの良い場所ももう終わりかと思うと悲しい気分になります。
標高1200mあたりまで下ると、久々の樹林帯には青々とした苔がむし、雪に慣れた目に鮮やかでした。 そしてこの辺りからは歴史を訪ねる山歩きの性格が強くなります。別子銅山で採れた銅を新居浜に運ぶため、1702年に拓かれたのが銅山越。300年前の古の道を21世紀になって歩いているかと思うと感慨無量にもなります。要所要所に案内板が置かれていて、歴史の勉強になること請け合いです。
今日の宿泊地は銅山峰ヒュッテ。の脇のキャンプ地です。久しぶりに雪と無縁の夜が過ごせそう。ここも素敵な小屋なので泊まってみたかったのですが、しっとり湿ったテントを乾かしたいこともあってテント泊としました。
受付するのに小屋に赴くと、なななんと、お抹茶でもてなしてくれました。歩き疲れた体に暖かいお茶が美味しいこと!また、しばらく単調な食生活を送っていましたので、嬉しい刺激にもなりました。お心遣いありがとうございました。これで明日も頑張れます。そう、明日はいよいよ最終日なのです。
今日の行程
桑瀬峠-笹ヶ峰-銅山越-銅山峰ヒュッテ
所要時間:8h07
歩行距離:14.4km
累積標高:+1322m/-1660m
2 件のコメント:
目がどうにかなりそうな幻想的な日の出と雲海、素晴らしい~なんて言葉だけでは、表現できませんね。
走り回ってる様子が見えるわ^^。
この稜線歩き、選んだだけありますね・・
ずっと稜線歩きなんですね。
瓶ヶ森、笹ヶ峰、冠山、平家平・・ああ~~
歩いてみたくなった!!
平家平って落人が馬に乗って走り回ってたのかしら~~^^;
それにしても表現上手いね!!
冠山・平家平は次の機会にぜひ歩きたいところです。
瓶ヶ森も笹ヶ峰もオススメです!
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