足跡、爪痕、糞に食痕。大雪山を歩いていると、ヒグマが残したサインを至るところで目にします。わずかばかりの時間差をおいてクマとヒトとが同じ空間に立っている事実に、常にその存在を感じてはいました。実際に見かけたことも何度かあります。でも・・・
ここまで近かったのは初めてのことです。
昨日登った羅臼岳。羅臼平で休憩しているときでした。お客様が発した「クマ!」との声に顔を向けると、50~60mほど離れたハイマツがユッサユッサ揺れています。羅臼平に向かって降りてきた三ッ峰の斜面が、斜度を無くして平らになるかならないかというあたり。感覚的には「かなり近い」距離です。そこから、のそり、と現れたのはやはりクマでした。こちらを一瞥してゆったりゆったりと薮をかき分け歩いていきます。 ついさっき私たちが登ってきた大沢の方に向かっているようです。
そんなに大きくはないので、メスか親離れしたばかりか。少し歩いては立ち止まり、こちらに顔を向けては様子をうかがっています。一応クマスプレーを取り出しはしましたが、 「オレ、オマエラに興味ないもんね」という合図に、「こっちだって無関心ですから」と返し、即席の紳士協定が成立。お互い干渉せずに徐々に距離は離れ、ついにはお別れということになりました。本当はお互いに気になって仕方ないのに、知らないふりを装い合ったわけです。
怖いという感情がちっとも湧かなかったのは、おそらくクマが落ち着き払っていてくれたからでしょう。
羅臼岳の登り始めに置かれた看板を見ると、大沢付近では何度もクマが目撃されているようです。
でも、何度もこちらを振り返りつつ歩いていったあのクマのことを思い出すと、クマを見たというよりクマに見られたというふうに感じてしまいます。おそらくクマの方が先に私たちに気づいていたのでしょうし、そういう意味でも山で見られているのはヒトの方なのかもしれません。
知床のクマ密度の高さを再認識させられた日となりました。
3 件のコメント:
なんて美しいクマでしょう。
言葉が出ません。
実際会うとドキドキ緊張してしまいそうですが。
野生動物の楽園に人が入り込むのですから、きっとクマも人間を見つけていい加減迷惑に思ってないかな?
お互い傷つけないように、マナーを守って自然を壊さないようにあなたの楽園をちょっとだけ楽しませてもらいます。
なのでそっと、ただ見つめるだけにしてね。と思ってはダメかな?
マ、普通に見れますね。
多分いつもの通り道だと思います。
私も遭っていますので。
脅かさないように息を止めて………。
バッタリでなくてなにより。
ジョージさん、
ものすごいベテランの方ですら、一度も見たことがないなんてこともあります。
クマと会えるかどうかは巡り合わせなのでしょうね。
いずれ訪れるかもしれない邂逅の日のために、クマのことを勉強してみるのもいいかもしれません。
モンタンさん、
大雪山では毎日のように登っているにもかかわらず、クマを見かけたことは数えるほどしかありませんが、羅臼岳ではほとんど行くたびに見かけます。
知床ほどクマの密度が高いところは世界中他にないとも言われていますし、クマとヒトにとって特殊な山域なのでしょうね。
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