今回報告をしてくださったのは、北大農学部の松島さんと森林総研の八巻さん。以前から面識はあったものの、こうしてあらたまってお話を聞くのは初めてのことです。
“smart growth”とは何なのでしょうか?昨日の話から理解したところによると、
1)地域の環境を保全する
↓
2)豊かな環境に魅せられて観光客(利用者)が増える
↓
3)地域が経済的に潤う
↓
4)環境保全の意欲が増す
というような地域のための収奪的ではない発展サイクルを指すようです。ちなみに辞書では「賢明な都市開発法」と訳されています。
アメリカ・イギリス・ドイツでは、自然公園を有する地方自治体が“smart growth”に取り組み成功しているのだそうです。そして、三位一体改革で自然公園管理に用いられる国の予算が大幅に減り、地方自治体が関与せざるを得ない日本においても、この“smart growth”の視点が必要となるのではないか、と提言されていました。
たしかに、地方が自発的に管理に関わるには、なんらかの旨みが必要でしょうし、“smart growth”という考え方自体は素晴らしいものだと思います。でも、一つ気をつけなければならないのは、日本と欧米の観光客(旅行者)の性質の違いです。本州から大雪山に来る登山者を考えればわかるように、日本では観光客の圧倒的多数が団体旅行者であり、個人旅行者は非常に少ないのです。そして、団体旅行者が多いと、上のサイクルが回らない事態が考えられます。たとえば、
2)豊かな環境に魅せられて観光客(利用者)が増える?
観光客が増えるかどうかは旅行代理店次第となる可能性があります。たとえば大雪山では昨夏、代理店主催の登山ツアーの数が激減し、山が静かになりました。
3)地域が経済的に潤う?
団体旅行では、短時日にいくつもの観光地をまわるため、それぞれの地域での滞在時間に余裕がありません。また、決まった場所以外に立ち寄ることもありません。本当に地域にお金を落としているのでしょうか?旅行代金のどのくらいの割合が地域に流れるのか、調べてみる必要があるでしょう。
“smart growth”自体は地域振興と環境保全を両立させる素晴らしい方法だと思いますが、日本で成功させるには上記のような実情に合わせた方法を試行錯誤しなければなりません。
以上のような疑問点はあったものの、“smart growth”という視点は今までの私にはないものでしたから、非常に刺激を受けました。たとえば、私はもともと、オーバーユース対策としての入山料徴収には懐疑的だったのですが、“smart growth”を目的とするならば入山料も有効なのかもしれないと考えるようになったのです。
こういう刺激を受けられるから、研究会や勉強会にはマメに出席するべきなのですよね。
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