2007-12-13

九州山行7日目 開聞岳

11月30日(金)快晴のち晴れ

7時13分指宿発。始発から2本目の電車は乗客の全てが高校生で、1両編成の座席の7割方が埋まっています。そこにポツンと一人、大きなザックを背負った私。直接好奇の目を向けられたり、あからさまに邪魔者あつかいされたりはしませんでしたが、いつもどおりの通学列車の中で唯一非日常的な存在となっていたことは明らかです。

期末テストが近いのか真剣な目でノートをめくっていたり、難しい顔をしてマンガを読んでいたり、じっと目をつぶって音楽に聴き入っていたり、大好きな携帯電話をいじっていたり。考えてみれば、どこに行くにも車で、行く先は山なんていう生活を送っていると、普段高校生の姿を見かけることはほとんどありません。若さと幼さが入り交じった彼らの挙動を懐かしく眺めているうちに、電車は開聞駅に到着しました。

プラットフォームと車回しがあるだけの素っ気ない開聞駅。他に降りる人もなく寂しい気持ちになりかけましたが、後を振り向いた瞬間そんな些細なことは全部吹き飛びました。だってこの景色!この天気!駅の裏すぐ間近に、目指す開聞岳が聳えているのです。しかも久々の快晴の空の下。朝の爽やかな空気の中。薩摩富士の異名通り、見事な円錐形の頂上部が駅前の林の上にツンと突き出ています。

開聞岳に一旦背を向けて、国道沿いに回り込むようにして踏切を渡ると、あとは登山口まで緩やかな坂道を登るだけ。背中の大きなザックを心なしか軽く感じるのは、やっぱり天気のおかげでしょうか。

幸い早朝から開いていた開聞岳山麓のふれあい公園管理棟でザックを預かってもらうことができました。指宿駅にはザックが入るほどのコインロッカーがなく、開聞駅にはコインロッカーそのものがなく、駅前にも預けられそうなところはなく、もしここが開いていなければテント泊縦走の装備全てを背負って日帰り登山をしなければならないところでした。半ば覚悟していたので、詰め替えたサブザックの軽いこと!

登山道はほとんどが樹林帯の中を通っていますが、時折木々が切れる場所があり、そういう場所からの景色は見事の一言です。しかも登山道が開聞岳の山腹をぐるっと1周半するようにつけられているので、展望が開ける場所に着くたびに見える方角がどんどん変わっていきます。5合目付近からは近くの池田湖とその奥に桜島が見えていました。

所要1時間ほどで山頂に到着。ザックはいつになく軽いし、空気は涼やかだし、木漏れ日は気持ちいいしで、ずんずん登ってきました。この景色を早く見たかった、というのもあります。この旅、山では初めての快晴ですから。

錦江湾を挟んで九州最南端佐多岬。その他にも種子島・硫黄島がくっきりと海に浮かび、霞んだ向こうに屋久島も見えていました。それにしても・・・。ほんと見事に屋久島入島とともに天気が崩れ、屋久島出島とともに天気が回復したものです。
鹿児島:快晴
屋久島:曇り→小雨→大雨→曇り
鹿児島:快晴
なのですから。
そうさオイラは嵐を呼ぶバックパッカーなのさ。ルルル悲しくはないのさ。悲しくは、ないのさ。

海風の吹き抜ける山頂は意外に寒く、私は岩陰でブルブル震えていました。というのも、雨具も防寒具も大きなザックの中に置いてきて、持ってきたサブザックにはパンとお茶しか入っていないのです。いままでどんな低い山に行くときでも完全装備をしてきた私にとって、こんなことは生まれて初めて。いつまでも景色をみていたかったのですが、ついに寒さに負けて下山してしまいました。

下りもぴゃーっと1時間ほど。山麓の公園では紅葉が見頃となっていました。

管理棟でザックを受け取り、ついでに登山証明書をいただきます。春にはこんな素敵な景色が眺められるのか、と聞いてみたところ、菜の花の栽培が減ったため今では写真ほど一面の黄色にはならないのだそうです。でも一度見てみたい景色ではありますね。

公園から開聞駅に向かう途中、道路脇に建っていた民家。瓦屋根ですよ、瓦。これを見ると北海道を出て遠くに来たという気持ちになります。はじめて瓦屋根を見たのは中学の修学旅行で東北へ行ったとき。北海道で生まれ育った私には瓦は物珍しく、時代劇のセットやお寺でもあるまいし、どうして現代になってまだ瓦を使うのだろう?と思ったものです。たとえば、手で回して開ける車の窓のような。たとえば黒電話のような。たとえばカセットテープのような。新しい便利なものに取って代わられた古く不便な存在。瓦とはそんなものだと思っていました。今もその考えは変わりませんが、でも間違いなく風情はあります。旅人として眺めるにはこれほど旅情をかき立てられるものもありません。今私は“内地”文化圏にいるのです。

こういった狭い道も“内地”らしくていいですね。しかも狭いだけではなく、そこにバスが通るというのがたまりません。東舞鶴駅前の狭い道路が交わる交差点で、路線バスが一度で曲がりきれずに切り返しをしていたのを見たことがありますが、その道が国道であることを知ったときにはそれは激しいカルチャーショックを受けたものです。それ以来、バスが狭い道を走ることにたまらなく惹かれてしまいます。むぎゅむぎゅと狭い道を縫って走れよ、バス。

指宿駅でバスから電車に乗り継いで、再びやってきました鹿児島。鹿児島中央駅からは、ビルの谷間に桜島が覗き、なんとも不思議な眺めになっています。

今日の宿は駅前のサウナ。1泊3000円はそう安くありませんが、海外の安宿ドミトリーのような部屋でベッドに寝られ、入退場が自由で、お風呂も入り放題、しかも駅まで徒歩5分かからないとくればこれは良い条件です。明日は5時40分発の電車に乗って霧島に向かわなければなりませんから、 駅から近いのはありがたいのです。

お風呂でさっぱり汗を流したら、鹿児島の町の前回行かなかった部分をそぞろ歩きましょう。小腹が減ったところでちょうどみかけたさつまあげ屋。いろいろな種類のさつまあげがそれぞれ100g単位で売っていました。その中で目を惹いたのが、不揃いなさつまあげの詰め合わせ。形が整っていないことは気になりませんよね。いろいろな味を食べられることが嬉しいのです。

特産品も食べたし、これですっきりと鹿児島を後にできます。

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