2007-12-14

九州山行9日目 宮崎

12月2日(日)快晴

突然サイレンの音が辺りに響き渡り、何事かと思い飛び起きました。御池キャンプ場に張ったテントの中、時計を見ると時刻はちょうど6時を指しています。「ああ、時報みたいなものか」と一人納得し、そして一瞬の静寂が訪れた後、示し合わせたかのように一気に音の世界が始まりました。ニワトリが刻を告げ、シカがいななき、カモとカラスがそれに負けじと声を張り上げる。いまだ暗闇に包まれていても、動物たちは朝を感じとりそれぞれに営みを始めたのです。

今日は高千穂峰山麓の御池キャンプ場から宮崎を目指して移動します。バス-電車-電車と乗り継がなければならず、本数も少なく接続も悪いという状況ですから、早め早めの行動をしなくてはなりません。となれば、動物たちと一緒に起きるのがいいでしょう。 ごそごそと寝袋から這い出し、撤収を始めることにしました。

やがて朱に染まってくる東の空。鳥たちの声が一段と賑やかになり、御池はどんどん湖面を現していきます。昨夜ここに来たときにはすでに真っ暗で、目の前の池がここまで大きいとはわかりませんでしたが、これでようやく全貌が明らかになります。

テントを乾かしたたみしていると、実にたくさんの人が湖畔を行き来するのが見えます。手に手に大きな双眼鏡を持っていて、人によっては三脚をかつぎ、中には近づいてきて「もう見ました?」と話しかけてくる人もいます。何かと思えば彼らはみなバードウォッチャーなのだそうです。御池では珍しい鳥が見られるということで、それを目当てにこんな早くから集ってきているのだとか。

明るくなるほどに数を増すバードウォッチャー達と別れ、私は一路バス停を目指します。8時40分のバスを逃すと次の便は4時間後。バス停までどのくらいの時間がかかるかわからないので、これでもかというくらい余裕を見て出発しました。

思いがけず近道をみつけ、8時にはバス停に着いてしまいました。あまりにヒマなので次のバス停まで歩きます。初めて訪れた場所で地図もなく知らない道を歩いていると、家並みも植生も看板も花壇の花も、目に入るもの全てが新鮮で、今まさに旅をしているんだという感慨にどっぷりと浸ることができます。このままどこまでも歩いていきたいような、歩いていけるような、そんな気分にもなります。

高原駅行きのバスにはおばあちゃんが一人ちょこんと前の席に座っていただけ。ごくごく静かな日曜の朝です。高原駅の構内からは霧島連山が見えていました。線路は続くよ霧島の山に。この山を背に、これから都城に向かいます。

電車の乗り換えで降り立った都城。九州に上陸したときからずっと気になっていた飲み物を、ようやく飲むことができました。その名も“スコール”。ここ都城市に本社を置く南日本酪農協同株式会社がつくる清涼飲料水です。味はカルピスソーダそのものですが、パッケージが違うだけで新鮮な気分になりますし、「ここでしか飲めない」感がまたたまりません。 うしろの並木がさらに気分を盛り上げてくれます。

乗り換えで1時間待ち、電車に乗って1時間かけ、やってきました宮崎市。 県庁所在地としては駅前が少し寂しい気もしますが、ここには今や有数の観光名所となった宮崎県庁があります。バスでやってきて、ここで記念写真を撮り、近くの物産館に寄るというのが観光ツアーに組み込まれているようです。

県庁前の「県庁楠並木通り」。大きな楠が並び立ち車道を覆い、静かで優しげな雰囲気を醸し出しています。旭川のプラタナス並木も初めて見たときには心奪われたものですが、この楠並木も負けてはいません。一見すると北海道の初夏の風景のようにも見えるのが、さすが南国宮崎です。

市内の日帰り温泉に入浴したり、無料のレンタル自転車を借りて走り回ったりして、充分宮崎を楽しんだら、17時32分発のバスでフェリーターミナルへ。

宮崎発大阪行きのフェリーに乗船します。これで九州ともお別れ。明日の朝には大阪入りです。九州を巡る旅から、寄り道しながら北海道へ帰る旅へと変わるのです。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

「高原」(こうげん)駅、なんと取って付けた様な名前と思って地図を見たら、「たかはる」とありました。
さすが、宮崎県。

快調過ぎて読者が付いて来ませんね。
頑張れ、舎友。

DOEI Takuma さんのコメント...

高原町には
祓原(はらいばる)
皇子原(おうじばる)
なんてのもあって、アイヌ語地名とは違った風情が感じられますよね。

北斗市とか大空町とか南セントレア市とかではなく、やっぱり歴史に裏付けられた地名いいものです。