登山道侵食という言葉はもはや市民権を得たと言ってもいいでしょう。黒岳から赤石川に向けて下る登山道は侵食の酷い場所の一つでした。今では近自然工法を援用して補修がなされましたが、それでも侵食の爪痕はしっかりと見て取れます。
今回重要なのは、ここから先。侵食が起こるということは、当然削られ流された土砂が存在するということになります。では、その土砂はどこへ行くのでしょう?答えは上の写真の通り。流れ出た土砂は登山道から溢れ出し、以前植生に覆われていたであろう場所を埋めているのです。
もう一つは、北海岳から北海平へと下っていく登山道。ここも侵食が目立つ場所です。えぐられて深くなった登山道は手前から奥に向かって延びていますが、途中ちょうど人物の立つあたりから先の登山道は全く侵食されていません。その代わり、そこから分岐するように深い溝が右方向に刻まれています。
分岐点から見ると、溝はこの通り。かなり深いものです。
遠くから見てもはっきりわかります。松田岳から見ると斜面に茶色い筋が認められますが、これが件の溝なのです。ずいぶん下まで刻み込まれています。これは登山道侵食そのものではなく、登山道侵食が引き金となった新たな浸食、と言えばいいでしょうか。
1 人が歩き登山道ができる
2 登山道に水が流れ込み浸食を起こす
3 浸食された登山道は川となり水と土砂を流す
4 流れは低い場所を目指し登山道を逸れていく
5 登山道とは全く関係のない場所に浸食が起きる
という過程を経たものと考えられます。
今まで私は登山道侵食を考えるときに、えぐれていく登山道のことだけに着目していました。でも、今回示していただいたように、えぐれらて流れていく土砂も同じくらい重要な問題を引き起こすというのは、まさに蒙を啓かれた気分です。個人的には今回最も勉強になった点です。 今後この問題にはなんらかの形で取り組んでいきたいと思っています。
それにしても、やっぱり幾つになっても勉強って大切なものだと再認識しました。またこういった勉強会を行いたいと思います。今日ご参加のみなさん、大変お疲れさまでした。そして明日一番にスイスに向けて発つという平川先生。そんなにお忙しい中だというのに、大雪山までおいでいただき本当にありがとうございました。













































