2009-12-06

近畿山行・7日目 大峯奥駈道6

11月17日(火) 雨

深仙ノ宿で一度入らなくなったFMラジオ。昨日は再び電波が入るようになりました。ただ、コマーシャルの感じが今までとどこか違うような気がします。よくよく聴いているとどうやら三重から発信されている放送でした。さすが南奥駈道に入っただけはあります。思えば遠くへ来たもんだという感じでしょうか。

快適な一夜を過ごしたお礼にわずかばかりの運営協力金をポストに納め、いざ出発。夜半から降り出した雨がシトシトと続いています。昨日・一昨日と二日間好天の中を歩いてきて、やっぱり山は晴れに限る、なんて思っていたらこれです。どうも今回の縦走は雨に好かれちゃっているようで。

雨の強さはそれほどでもないのが唯一の救い。景色は・・・この通り。ほんのわずか先にある笠捨山の姿ですらうっすらと霞んで見えるほどです。

濡れた落ち葉が何重にも積み重なった急登に苦労しつつ、まずは今日最初のピーク・笠捨山に到着です。昨日釈迦ヶ岳から遥か遠くに望んでいたのがこの山なのですから、ここからも釈迦ヶ岳から連なる山並みを眺められるのが道理です。でも、無論この天気では望むべくもありません。山頂からは、たなびく低い雲の間に間に手近な峰が見えるのみ。

景色が期待できないとなれば、石柱標識の距離表示だけが励みになります。この数字が減っていくことでしか、自分が移動していることを実感できないのです。嬉しいことに、笠捨山の石柱には最終目的地・熊野本宮の名が示されていました。いよいよゴールへのカウントダウンが始まります。

笠捨山からの下りも大概急でしたが、次に登るこの地蔵岳はさらにはるかに険しい山でした。日本昔ばなしに出てきそうなおにぎりみたいな平和な山容をしているくせに、

いざ登ろうとするとこれです。岩に根が絡みついた急登。途中からは延々鎖続き。手と足を使ってよじ登っていきます。

登りきると樹林に包まれた狭い山頂。人ひとり立てばもう終わりという感じです。わずかに進むと御本尊がありました。まず間違いなくこれから訪れる急な下りを無事通過できることを祈ってしまいました。

そして予想通り現れたこの難所。一瞬、本当にここ降りるの?と思ってしまったほどです。今まで荷物だ靴だ雨だと散々泣き言を言ってきましたが、そんな弱音はここにこそ相応しかったのです。ほとんど一枚岩のような、ほとんど垂直に下るような、そんな場所に鎖が一条垂らされています。しかもそれがかなり長く続いているのです。多分、空身なら面白いアスレチックなんでしょう。でもいまだに30kg弱はある重荷を背負っていると、体の動きが制限されるだけでなく、ちょっとバランスを崩すだけでも大きく揺さぶられてしまうのです。鎖につかまる腕にも常ならぬ負荷がかかります。ここほど背中の荷物を恨めしく思ったことはありません。

慎重に慎重にようやくの思いで下って、振り返ってみると存外迫力がなく見えてしまうのが悲しいところ。誰かが下っている写真でもあれば、私の気持ちも伝わりやすいのでしょうけど。

雨の写真ばかりも何なので、ちょっと違う話題を。今回の縦走には、行動食としてこんなものを用意してみました。朝食などに牛乳をかけて食べるあれです。出発直前にとある方に薦められて早速採用しました。軽いし嵩張らないし何より重さあたりのカロリーが高いのが良いところ。ドライフルーツも入っていますし栄養的にも良いでしょう。そのまま食べてもそこそこ美味しかったです。なにより一番良かったのは行動食に変化がついたこと。いつも同じようなものしか持ち歩かないので、山中泊のときにはすぐに食べ飽きてしまうんです。次回もぜひ持ち歩こうと思っています。情報をくださったKさん、ありがとうございました。

閑話休題。そんな恐ろしい岩場を過ぎると、そこから先は淡々とした杉林になりました。そうなると「たまに岩でも出てこないと飽きるんだよ」なんて思ってしまうのが現金なところ。完全に喉元過ぎて熱さを忘れた状態です。鬱蒼とした杉の中の尾根道を登って~下って~登って~下って~。ただそれだけを繰り返していきます。変化が現れたのは車道と行き会ってから。

その先はまた別のサイクルが始まります。車道に接したと思ったらすぐに離れ、また接してすぐに離れ。何度も何度も繰り返します。おそらく車道は一定の斜度を保って通じているのだと思いますが、こちらの奥駈道は登って下ってがあります。車道を見て登り下りまた車道を見てという具合です。

いつまでも続くかに思われたそのサイクルもようやく終わり、しばらく車道を歩くようになりました。右手にちょっとした高台を発見。どうやら展望台になっているようです。雨宿りする場所はないものかと見に行ってみると、思った通り!四阿がありました。これでようやく落ち着いて休憩できる・・・。

ん、待てよ、歩き終えるにはまだちょっと早いけれど、今日はここに泊まってしまうのもいいかもしれない。四阿の下にテントを張れれば雨もあまり気にならないし。元々今日は玉置神社の先の玉置の辻というところでテント泊をしようと思っていましたが、そこは単に林道と奥駈道の交差点というだけでなにか施設があるわけではありません。林道なら平らなスペースが多少はあるだろうというだけのことです。ここにはトイレもありますから、林道でその辺に用を足すよりも環境への影響ははるかに小さいでしょう。

そもそも、玉置神社近辺というのは大峯奥駈道中、最も宿泊に困る場所なのです。所要時間から考えてこのあたりでの宿泊は絶対に必要なのにも関わらず、山小屋はない、野営指定地や適地もない、宿坊は一般登山者には開かれていないという三重苦だからです。玉置神社に無理を言って宿坊に泊めてもらうという人もいるようですが、そういうのはちょっと違うんじゃないかと思ってしまいます。

これだけ雨が降っていて一面ガスに覆われているのですから、今から展望台を利用しようなんて人もいないでしょう。明日夜明けとともに出発すれば迷惑をかけずに済むでしょうし・・・。とまあそんなわけで今日は展望台の四阿の下にテントを張ることに決めました。

ほんの小雨程度でも8時間ずっと降られるとなにかと濡れてしまうものです。雨具を着ていても首筋やら手首やらから水は入ってきますし、何重に防水をしていても荷物の中身がしっとりと濡れていたりします。どことなく湿った感じのするテントの中で、奥駈道最後の夜は更けていきました。

今日の行程
行仙宿山小屋-笠捨山-香精山-玉置山展望台
 06:40 行仙宿山小屋 発
 08:08 笠捨山 着
 09:24 地蔵岳 着
 10:43 香精山 着
 12:40 蜘蛛ノ口 着
 14:23 玉木山展望台 着
所要時間:7h43
歩行距離:13.0km
累積標高:+1327m/-1461m

0 件のコメント: