2005-01-28

雪の中から鳥がっ‥‥!

 札幌では大雪らしいが、旭岳周辺では一月に入ってから小雪傾向が続いていた。ところがここへ来てようやく少し積もり、スキーやスノーボードの愛好者を安心させている。とはいえ、あまり積もりすぎるとラッセルが大変なので、明日のツアーの下見を兼ねて山麓の積雪量を確認しに旭岳温泉まで行く。
 例によって天女が原から深雪の森に分け入る。深い所で股下くらいの積雪だ。放っておいて明日まで雪が降り積もったら、腰までのラッセルになったかもしれない。今日のうちに"雪踏み"をしといて大正解と言えるだろう。
 歩き始めて一時間半くらい経った頃、とつぜん目の前の雪の中からハトくらいの大きさの鳥が飛び立った。エゾライチョウだ。ご本人がいなくなった後の穴を見てみると、どう見ても雪の中に潜っていたようにしか見えない。ひょとして雪の中で寝ていたのだろうか?フシギに思いながらさらに進むと、こんどは合計四羽のエゾライチョウが次々と雪の中から飛びったった。結婚式のハトもビックリのマジックショーだ。
 ライチョウたちが飛びったった後の穴を見てみるとやはり雪の中に潜っていたようだ。空気を含みやすい新雪は"断熱材"として作用するので、外気がマイナス20℃以下になっても、雪の中は零度以下には下がりにくい。つまり雪の断熱作用を利用してライチョウたちは暖をとっていたのだと考えられる。なんて賢いのだろう!自然の摂理のなんて巧みなことか!こういうときは素直に神(カムイ)に感謝したくなる。
 そういえばアイヌ民族のチセは、雪にスッポリと埋もれる(つまり雪を断熱材として利用する)ことで直接外気と触れることを避け、冬でも暖かかったという話を聞いたことがある。ライチョウもヒトも昔からの知恵で巧みに自然界を生き抜いてきたのだ。
 それに比べていま我々がやっていることはなんなのだろう。屋根に積もった雪はすべて下に落とし捨て、その替わりに科学物質と膨大なエネルギーを費やして作った断熱材を家のまわりに張り巡らす。暖をとるために家の裏山の枯れ枝を燃やすのでなく、アラビア半島の地中に埋まっていた油を何千キロも離れた家まで運ぶ。ストーブはすべて電子制御なので、地震で数日停電したら凍死である。
 ライチョウとヒト、どっちがお利口か。答えは言わずもがなだろう。

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