2011-07-27

登山道の保全と整備

ご飯が美味しかった、朝焼けがきれいだった、なんて話ばかりだと、山に遊びに行ったんじゃないかと思われそうですが、実はちゃんとした仕事だったんです。正式名称は第2回ひがしかわ自然ガイドによるエコツーリズム・モニターツアーで、テーマは「登山道の保全と整備」。ほら、そう聞くと急に真面目な感じが高まりますよね?

自然公園における登山道荒廃については学生時代に少しかじり、またガイドとして大雪山を歩く中でつぶさに観察してきた、自分自身関心の高い問題です。それについて現場を見ながらお話する機会をいただいたことはやりがいがあり嬉しいことです。

もちろん、小難しい話ばかりしてもしょうがないので、荒廃の現場を見て何かを感じてもらうということに重きをおきました。結構あるんですよ、酷いところが。

たとえば間宮岳から中岳分岐に向けて下っていく途中。ここの登山道は人の腰ほどもえぐれてしまっています。ここは今、絶賛崩壊継続中です。幸い、もうすぐ環境省による補修工事が入るそうなので、一安心ではあります。

白雲岳直下、花の沢源頭付近で、今まさに生じつつある登山道複線化。 登山道複線化とは、登山道がえぐれたりぬかるんだりして歩きにくくなる結果、そこを避けて植生などを歩く登山者が増え、平行して新しい登山道ができる現象です。放っておくと登山道間に細長く残った土壌および植生が崩れて登山道拡幅に至ります。

ここはまだ完全に植生が枯死していないようなので、今のうちに対策をすればこれ以上の荒廃を防げるかもしれません。

そんなわけで、同行した東川自然保護管事務所のレンジャーと、白雲小屋の管理人さんの協力を得て、こんな対策をしてきました。複線化して生まれつつある登山道の入口と出口にポールでバツをつけます。時間にして5分。材料は白雲小屋からお借りした余ったテントポール。おそらくたったこれだけでも、かなりの効果があるはずです。複線化を生む登山者の大部分は決して悪気があって登山道から外れ植生の上を歩いているわけではないからです。それが問題となることを自覚していないだけなのです。ですから、こうやって「ダメなんですよ」とメッセージを送ると、それを受けて正しい行動をしてくれます。

もちろん、ただポールを地面に刺しただけですから、いつ倒れたり外れたりするかわかりません。1週間おきくらいで見回りをするなど細かなメンテナンスはかかせません。これは登山道管理においては最も重要な要素です。大規模な工事にお金をかけることも必要な場合がありますが、人に対してお金をかけて現地に貼りついてもらうことのほうが効果は高いといえます。

エコツアーという視点からも、こういう簡単で短時間でき、かつ効果のある作業を参加者の方に体験してもらうというのはとても有意義なことと思われます。せっかくですから、時間をおいて何度か訪れていただいて、作業の結果などを確認してもらえるともっと良いですね。

そう考えるといろいろとアイディアが浮かんでくるなあ。

今回は大雪山の登山道管理が抱えるさまざまな問題を見て感じていただきたかったのですが、私の説明で上手く補足できていたでしょうか。何かを感じた結果、少しでもいいので何か行動に移していただければ幸いです。

2 件のコメント:

もっち さんのコメント...

昨日の山も登山道が「複々線化」している箇所が多かったです。
元々の登山道を歩こうと思うのですが、近視眼的に歩きやすいところを辿っているうちにいつの間にか端の植生のはげた平坦な土の部分に出てしまう。
「いかん、自然破壊だ!」と内心の超自我くんが叫びます。
(そもそも、どうも私は常日頃から道の真ん中を避ける習性があるらしく、端を歩く傾向もあるし。)

超自我くん、頑張って。
彼の名はdoeiくんです。

DOEI Takuma さんのコメント...

一番大切なのはちゃんとした管理です。

管理者が自然公園の歩道をしっかりと管理して、その後で利用者にマナーを呼びかけるというのがあるべき姿ではないかと思います。

現状では、管理の不十分さを利用者のマナーに転嫁している感さえあります。

超自我に頼らなければならないなんて、管理者の能力不足を露呈しているだけなんですけどね。