2009-12-03

近畿山行・3日目 大峯奥駈道2

11月13日(金) 曇り(夜雨)

素敵な小屋でごろごろと快適な午後を過ごし、たった3時間しか行動していない割に夜もぐっすりと寝て、爽快な気分で迎えた朝。ラジオで聞いた天気予報によると、今日は午後から雨が降り出すとのこと。できるだけ早めに出発し、できるだけ早めに歩き終えたいところです。

まだ暗いうちに起き出して、行動できる明るさになったらすぐに出られるようにします。気温が高めで、寝袋から出る時に躊躇せずに済むというのはありがたいことです。

6時35分二蔵宿小屋発。小屋のすぐ脇から大天井ヶ岳に取り付き、早速の急登開始。かなりの斜度があり朝一番の体には辛すぎます。1日分食料が減りザックも軽くなっているはずなのですが、まだあまり体感できません。

風の音がゴウゴウと響き木々の梢がぶるんぶるん揺れているので風は強いようです。「ようです」なんて他人事みたいに言っているのは、濃い樹林帯の真っ只中にいるためにそよ風ほども届いてこないからです。標高が低く木々に守られている今はまだいいとして、今日は1700mを超える山上ヶ岳を通過します。もしこの風を直接浴びることになったらちょっと困ったことになりそうな、そんな強風です。

途中一度だけ樹林が途切れて背後に山並みが見えました。おそらく昨日歩いてきた尾根ではないでしょうか。昨日は一日中霧の中でしたが、2日目にしてようやく景色を見ることができました。

ここから再び急登となった登山道は、大天井ヶ岳山頂をかすめて通り過ぎ、登り以上に急な坂をぐんぐん下っていきます。登ったら下る。登ったのに下る。実は大天井ヶ岳の山腹を巻く在来道なる道があり、そちらを通るほうがはるかに楽ではあるのですが、ここはせっかくなので古の道である尾根通しにこだわります。

ぐいぐい下って大天井ヶ岳と小天井ヶ岳との鞍部にある五番関にやってきました。ちょっとした広場の先になにやら木でできた門が見えます。女人結界です。そう、この先山上ヶ岳を中心とする一帯は今でも女人禁制となっているのです。

女人禁制については色々な議論があるところです。山上ヶ岳に存する大峰山寺が登山者に女人結界維持を訴えかけている一方で、それを無視したりこっそり登ったりする女性は結構いて問題になっているようです。しかし、そもそも修験道の本山自らは女人禁制を廃するよう動きつつあるといいます。いろいろな立場がからみ合った複雑な問題であることは間違いありません。私自身は女人禁制には強い違和感を感じますが、かといってもし自分が女性だったなら禁を犯して登ることはできないとも思います。

大天井ヶ岳の登り下りとは一転してなだらかに続く五番関からの道。一面霧と落ち葉に覆われていて、なんとも静かな気持ちになります。

かと思うと、尾根を外れてトラバースするときには結構緊張を強いられたりもします。緩やかなのは尾根の上だけで、その左右の斜面は谷底に向かって急な切れ落ちているからです。しかも今でも崩落が起こっているらしく、表土が剥がれ落ちて登山道が途中で途切れていたりします。足の置き場は狭いし濡れた落ち葉は滑りやすいし背中の荷物は重いし・・・ホント神経使います。

突然目の前に現れた建造物。洞辻茶屋だそうです。その名の通り、中には売店が連なっていて、うどんやらくず湯やらのお品書きが掲出されています。広い休憩スペースも設けられていて、ハイシーズンにはさぞ賑わうのだろうと容易に想像できます。今はとっくに冬季閉鎖となっていて、シャッターが閉め切られているのが残念なところです。面白いことにこの建物、登山道の上に覆い被さるように立てられているのです。真ん中に反対側まで続いているのが道で、その左右に売店と休憩スペースがあり、全部を屋根で覆っているという具合です。

葉を落とした木々の間からは麓の集落・洞川が見え隠れ。いいですね、景色を眺められるというのは、やっぱり。

洞辻茶屋を越え、すぐ近くにある似たような造りの陀羅尼助茶屋を越えると、突然周囲に切り立った岩が目立つようになり、修験道の行場にやってきたと思わせられます。こういう険しい山だからこそ修行に向いているのでしょうね。こわいこわい。

これがかの有名な西ノ覗岩。断崖絶壁から身を投げ出すようにして乗り出すそうで・・・。登山道上には危険だから素人が勝手に行ってはいけない旨、注意書きがありました。もちろん私は近づきもしません。

山頂一帯は一大修験道聖地という感じがします。所狭しと宿坊が軒を連ねる様は一種の街の様相を呈しています。ここも賑わっている時に一度来てみたいものです。泊まれるものなら宿坊にも・・・。人っ子一人いないこの静けさも好きではあるのですけども。

宿坊街を抜け、大きな門のこの先が大峰山寺となります。

そこはとても山頂とは思えない広い場所でした。普通に平地にいるような気になるほど広く平らです。本堂は堅く雨戸を閉ざしています。

広い山頂の片隅にひっそりと三角点と山名標識が佇んでいました。このすぐ隣に、役行者が蔵王権現を湧出したという岩が大々的に祀られているので、なんというかオマケ扱い臭がします。お寺の一角に間借りしているような雰囲気です。

周囲はやっぱり木々に囲まれているので、心配したような強風もありませんでした。北海道感覚だと、樹林限界は1500mでその上は強風吹きすさぶ高山帯なわけで、山上ヶ岳のように1700m以上で高木が立ち並ぶというのは、頭ではわかっていてもやはり奇異な感じがします。

さらに面白かったのが、山頂直下に広がるちょっとした笹原。笹自体は見慣れているのですが、なにが面白かったかというと、「頂上お花畑」と大書した立派な石柱が立っていたことです。お花畑と言っても笹原にしか見えません。時季になればこの中にお花が咲き競うのでしょうか?いったいどんな花が?興味はつきません。

天気予報どおり、ただでさえ怪しい雲行きがさらに怪しくなってきました。山上ヶ岳を辞して先を急ぎます。

ほとんど平らな尾根道をゆるりと歩いていくと、30分ほどで小笹宿に到着。まだ12時前ですが、これから荒天になるということで今日はここまで。昨日に続きずいぶん早い時刻に歩き終えることになりました。奥の小さい建物が今夜の宿です。中はどうなっているかというと・・

こんな。今まで見た中で一番小さな小屋です。間違いなく。全部で6畳くらいしかないんじゃないでしょうか。しかもそのうち半分近くを土間が占めているので、快適に寝られるのはせいぜい3人。詰めれば5人までは入るか。まあ、昨日同様今日も一人きりでしょうから、むしろこのくらい小さい方が落ち着きはします。

ありがたいことその1。土間の上には何本もロープが通してあり、そこに濡れ物を乾かすことができました。ありがたいことその2。床の上にあらかじめ銀マットが敷き詰められていました。これでより暖かく快適に過ごせます。ありがたいことその3。なんと文庫本が1冊置いてあったのです。出発時に4冊あった本は、飛行機の中で1冊、昨日1冊読み終わり、残り2冊しかありません。しかもそのうち1冊はもう半分ほど読み進んでいるのです。これから長い午後を過ごさなければならないこの状況で本を補給できるとは!自分の本は後のためにとっておいて、まずは置いてあった本を読ませていただくことにします。

今日の水場。ほとんど稜線上にある小屋だというのに、すぐ脇をこんな小川が流れていました。いったいどこからこれだけの水を集められるのでしょう?昨日に続き今日も余裕で水を手に入れられました。余分な水を2.5Lも持つ必要はなかったかもしれません・・・。

今日の行程
二蔵宿小屋-大天井ヶ岳-山上ヶ岳-小笹宿
 06:35 二蔵宿小屋 発
 07:28 大天井ヶ岳 着
 08:08 五番関 着
 09:46 洞辻茶屋 着
 10:55 山上ヶ岳 着
 11:39 小笹宿 着
所要時間:5h04
歩行距離:9.8km
累積標高:+1159m/-591m

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