2009-12-04

近畿山行・4日目 大峯奥駈道3

11月14日(土) 曇り(朝雨)

昨日は18時にはやばやと床につき、今朝起きたのが5時30分。延々12時間近く寝続けていたことになります。昨日も一昨日も行動時間がやたらと短く、ほとんど疲れていないというのに、どうしてこんなに気持ちよく寝られるのでしょうか。我ながら不思議です。

起床5時30分とやや遅めなのは、今日もほんのわずかしか歩かないからです。というのも、昨夜の天気予報によると、「大雨・強風・雷注意報、雨昼前から曇りのち晴れ、降水確率午前70%・午後20%」となっていたのです。つまり、午前中は完璧に荒れ模様で、午後から回復に向かうということでしょう。

そんなときどう行動するかで人となりがわかってしまうのかもしれません。雨なんて関係ないぜ!バリバリ歩くぜ!という人もいるでしょうし、雨の中歩くのはイヤだけど小屋に滞在し続けるのも飽きるという人もいるでしょう。雨なら絶対歩かずに一日停滞という人も中にはいるかもしれません。私の場合は、午前中は小屋で雨をやり過ごして午後からわずかでも歩くという折衷案を取りました。雨の中歩くのはイヤという気持ちと、本と食料に余裕がなくなってきたので少しでも距離を稼いでおきたいという相反する気持ちの間でギリギリの折衝が行われた結果です。

というわけで今日の目的地はここから5時間ほどで行ける行者還小屋としました。それならぎりぎり12時までは出発を遅らせられます。朝ご飯を食べて、荷物をまとめて、すぐに出られるように準備を終えて、それで時刻はまだ7時。外は予報通りの強い雨が降っています。文庫本を読み進みながら時折外の様子を確認。1時間が経ち、2時間が経ち、3時間が経ち。いつまでもしつこく振り続くかに思われた雨は、でもちょうど本を読み終わる頃にピタリと止みました。10時30分。結局3時間30分待ったことになります。ではボチボチ出発しますか。

小屋の脇を流れる小川を上流にたどるように歩き始めます。水と苔と霧に包まれた世界。霊的なというか、神聖なというか、自然と敬虔な気持ちにさせらるような、そんな神秘的な印象を受けました。確かにここなら修行の山にぴったりなのだとストンと納得がいく雰囲気です。ここを歩けただけでも奥駈道まで来た甲斐があるというくらい気に入ってしまいました。

水の流れはやがて無くなり、尾根の上を歩くようになればすぐに女人結界門に至ります。昨日の五番関から山上ヶ岳を経てここまでが女人禁制の範囲。

ここまで歩いてきた限り、大峯奥駈道は歩きやすく整備されていて、かつわかりやすい案内が要所に設置されていました。たとえば主要な分岐には必ずこのような立派な石柱があります。地名・方向・距離が書かれているので、これに従いさえすればスイスイと進めるようになっています。距離が表示されているのも目安になっていいですね。

公式な標識が上の石柱だとするなら、こちらの赤テープはボランティア的なものでしょうか。石柱よりもはるかに短い間隔でつけられているので、目にする機会はより多くなります。このあたりは林床に背の高い植物がないため登山道を外れやすくどこでも平気で歩けてしまいます。しかも作業道らしき踏み跡があったりして混乱に拍車をかけます。ですからこのテープは本当に頼りになりました。どこのどなたがつけてくれたものかわかりませんが、ありがたいことです。

今日最初のピークは大普賢岳。360度の大展望が広がる人気の山頂ということですが・・・。乳白色の霧の他には何も見えません。

稜線を歩いていてもせいぜい見えてこの程度。確かに風情はあって、これはこれで趣を感じられもするのですが、そろそろ違う景色も見てみたいかなー、なんて。

国見岳を越えると突然荒々しい岩肌がむき出しになりました。延々と鎖が続き、まっすぐに急降下したり、恐る恐るトラバースしたり。何度も言うようですが、雨で濡れているので大変滑りやすいのです。そして背中の荷物が重いのです。言い訳ついでにもう一つ、今回はすでに丸二年履き潰しかけた靴で来てしまいました。そろそろソールの張替をしなければならない靴ですからツルツル滑ること!

なんとか岩場を通りぬけて、これまた岩がちな七曜岳にやってきました。相変わらず雲は厚いものの、心なしか空気が乾いてきたような気がします。

すると休憩している間に、ズワサっという音でも聞こえそうなくらいの勢いで、雲に切れ間ができて広がり、遠くを見渡すことができるようになったのです。しかも陽光のオマケ付きで!すごいぞ、天気予報!見事に当たったではありませんか。

まだ完全に晴れたというわけではなく、雲の合間に時々景色が見える程度ではありますが、天気が回復に向かうと気持ちも上向きになるものです。足取りも軽く先に進みます。分岐に荷物を置いて久々身軽に行者還岳まで往復し(展望は全くなかったのですが)、行者還小屋へ向かって急傾斜をグングン下っていきます。

途中に今日の水場あり。ここもジャンジャン水がほとばしっています。・・・今日で3日目、豊富に水を得られるのはありがたい事ですが、背中に背負った2.5Lが・・・。せっかくなので、ここで洗顔と洗髪。といっても石鹸やシャンプーを使うわけではなく単に水洗いするだけなのですが、冷たい水がとても気持ちよく感じられます。サッパリした気分で心新たに小屋へ向かいます。

これが噂に名高い行者還小屋。聞いていた通り立派な小屋です。玄関の前にも大きく庇が張り出していて、雨でも安心して雨具の脱ぎ着ができそうです。トイレは外からしか行けませんが、やはりこの庇のおかげで雨の日でも行きやすくなっています。

中は中でこれまた立派。玄関を入るといきなり部屋というのではなく、ちょっとしたホールがあります。左側を見ると仕切りの向こうに流しと管理人室、正面の扉を開けると1部屋あり、右手にも扉があってこちらは2階建てで上下に1部屋ずつあります。登山者用の眠るスペースが計3つあるわけです。

この日は初めて同宿のグループが先客としてきていましたが、部屋が別だったため、挨拶をしたきりその後は特に会話をするでもなく、隣の部屋から物音が聞こえてくるでもなく、一人きりで泊まっているのとなんら変わりない一夜となりました。ここまで歩いていても会う人はなく小屋でも一人きり。そろそろ人恋しくなってきているので、できれば単独行の方とお会いして心温まる会話を交わしたいものです。

ずっと悪天が続いています。当初の予定では2日で歩く予定だった行程に、今日までの3日間をかけてしまいました。つまり熊野まで5泊6日の計画が1泊延びて6泊7日になったわけです。食料計画的にもう1日延ばすことは難しいので、明日からは毎日まじめに歩かなくてはなりません。

今日の行程
小笹宿-大普賢岳-七曜岳-行者還岳-行者還小屋
 10:32 小笹宿 発
 11:59 大普賢岳 着
 13:26 七曜岳 着
 14:28 行者還岳 着
 14:57 行者還小屋 着
所要時間:4h25
歩行距離:7.7km
累積標高:+664m/-890m

0 件のコメント: