2012-08-26

硫黄山-羅臼岳縦走・1日目

昨年から硫黄山登山口へ向かう道道が条件付き解放されたということで、遅ればせながら硫黄山から羅臼岳への縦走に行ってきました。ちょうど本州行きのツアーが中止になりぽっかり予定が空いたのです。

大雪山の麓から知床半島まではやはり遠く、この辺りまではなかなか訪れません。唯一、隔年くらいで羅臼岳ツアーが催行されるくらいでしょうか。もう10年以上前、まだ20世紀だったころ、羅臼岳から硫黄山まで縦走する予定で登り始めましたが、悪天候で途中撤退しました。それ以来の硫黄山となります。ようやく機会が巡ってきました。

早朝のカムイワッカ。昨日まではシャトルバスが運行していて、一般の車は通行止めだったそうです。本当ならシャトルバスを利用して縦走したかったのですが、そんなわけで硫黄山から羅臼平への往復という行程にしました。

駐車場の脇に監視小屋があり、その隣に登山届けを提出するスタンドがありました。もろもろ記入して出発。

すぐ目の前にゲート。登山口まではしばらく車道を進みます。

出発からわずか数分後。突然右手の法面をクマが軽快に下ってきました。目の前数十メートル。普段大雪山ばかり歩いていると、クマの存在は遠いものになってしまいます。たしかに足跡やフンは目にしますが、歩いているときに間近にクマそのものを目にすることはほとんどないからです。

(大雪山においても、車で林道を走っている時にはすぐ近くに見ることはありますし、登山道でも遠くの方にいるのを確認することはあります。でも歩いている時に出会わないということは、つまり大雪山のクマの方が警戒心が強いということでしょうか?密度の関係もあるでしょうね。)

クマは車道脇の大きな岩をひっくり返して、おそらくはアリを漁っていました。こちらの存在に気が付いているのかいないのか、全く気にするそぶりを見せません。何度か笛を鳴らすと面倒くさそうに海岸方面に下っていきました。

これですっかり頭が知床モードに切り替わりました。ここは世界一クマ密度の高い地域。大雪山とは違う場所。注意深く行かなくてはなりません。

標高250m付近にある登山口。まだ6時前なのですが、すでに蒸し暑く、汗がだらだらと流れ落ちます。

最初は樹林帯を淡々と。

やがて登山道はカムイワッカ川に沿うようになり、岩が目立ち始め展望も開けてきます。そんなとき、またクマが現れました。さっきよりもはるかに近い距離です。登山道を下ってきたクマはわずかに広くなったところで、道を譲り合うかのように私とすれ違いました。手を伸ばせば届く距離、とまでは言いませんが、動物園で見るよりははるかに近くです。幸いこちらを無視するかのように歩き去ってくれたので、私もできるだけ自然に歩くよう努めました。しばらく行き過ぎてハイマツの影から撮ったのがこの写真です。さきほど車道でクマを見て覚悟を決めていなかったら、慌てて適切な行動を取れなかったかもしれません。それにしても1時間しないうちに二頭も出会うとは。さすが知床です。

新噴気口で沸き立つ噴気。ただでさえ暑いのに、こんなのは見たくない・・・。ちょうど10年前の8月、羅臼にしばらく滞在したときは、本当に寒かったです。毎日冷たい雨が降り、山ではなく下界にいてすら昼間から薄手のフリースを着ていましたから。

進行方向に見えるとんがり。これが硫黄山でしょう。どんどん上がる気温。まだまだ遠い山頂・・・。

登山道は尾根を乗越してカムイワッカ川とは反対の沢に下りていきます。標高950m付近で沢に入り、あとは延々と枯れ沢を詰めていきます。それにしても本当に暑い!休憩中にTシャツを脱ぐと、吸収しきれなかった汗が水滴になって滴るのです。夏でも涼しい大雪山の高山帯をホームグラウンドとする私にとって、こんなのは初めてのことです。Tシャツを乾かすためにバサバサと振ると、顔にピチピチと汗が飛んできました。なんてこった。

深い沢ですから、おそらくかなりの雪が溜まり、長い期間雪渓として残るのでしょう。まだ咲いたばかりのエゾコザクラがありました。

何度か崖を巻いたりしながら少しずつ標高を上げていきます。

土砂に覆われた雪を発見。せっかくなのでわずかに冷気を浴びながら休憩とします。振り返ればオホーツク海。

沢から尾根に上がり、硫黄山への最後の登り。

岩だらけです。

一等三角点の置かれた硫黄山山頂にようやく到着。山頂までくるとさすがに風があり、少し涼しくなりました。ほっ。

山頂から見返すウトロ方面。こちらは良いお天気。

知床岬方面。こちらは雲が湧いてきたか。

下って見返す硫黄山。見事な溶岩ドーム。

白く輝く吊り尾根を渡ります。火山が作り出したこういう風景は私の大好物。

荒々しくて荒涼として本当にいいですね。

知円別平は一転して穏やかな草地。この辺り、きっとお花がたくさん咲くのでしょうね。歩いていて楽ですし楽しい箇所です。

羅臼岳方面は徐々に雲に隠れつつあります。予報では今日の午後から崩れるそうで。

不思議な魅力がある標識。これと似たのをジョンミューアトレイルで見た覚えがあります。懐かしい・・・。

今日は二つ池で野営。三ッ峰まで行こうかとも思いましたが、雲行きがどんどん怪しくなってきていたので、降り出す前に設営を終えたかったのです。

野営指定地の外れに置かれたフードロッカー。こういうクマ対策がしっかりしているのがさすが知床。アメリカやカナダのバックパッカーにとって、大雪山のようなクマ生息地でテントの中で炊事をして食事をして食料をそのまま置いておくなんてことはとても信じられないと聞いたことがあります。安全のためにはこういう設備が必要なんですね。

せっかくここまでしてもらっているので、当然食事もテント外ですませることに。早めに行動を終えたので、これから長い午後をゆっくり過ごすことにします。

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