2007-12-13

九州山行8日目 霧島連山2

中岳のあたりから普通の観光客の姿が目につくようになりました。ザックを背負わず、靴はスニーカー、街中で見かけるような服装。登山者とはすぐに見分けがつきます。私の大きなザックに驚きの目を向ける人たちとすれ違いながら、高千穂河原へ向かってぐんぐん高度を下げていきます。どうせ明日また登り返すのだからこんなに下らなくてもいいのに、という思いを無視して、灌木が現れ林が現れ、すっかり低いところに来てしまいました。

広い駐車場にお店やビジターセンターがある高千穂河原はいかにも観光地という感じがします。ホテルや民宿などの宿泊施設はありませんが、駐車場の外れにキャンプ場があるのでそこを利用するつもりです。ところが。

ビジターセンターに聞きに行くと、なんとこのキャンプ場、7月と8月の2ヶ月間しか使えないのだとか。「トイレもシャワーも水もいらないから泊まるだけ」とお願いしましたが、職員の方ににべもなく断られてしまいました。「タクシーを拾って下の温泉街に行ってはどうですか?」なんて言われても、それはちょっと違うんですよ。山を歩いて山に泊まってまた山を歩く。ずっと山の中にいたいこの気持ち、わかってもらえないんでしょうか。よっぽど黙って泊まっていこうかとも思いましたが、ここは一応国立公園内ですし、普段大雪山の利用者の方に注意をする立場ですし、やっぱり勝手なことはできません。

となれば、2日かけて歩く予定だったコースを今日1日で歩ききってしまうほか手段はありません。幸い下山口の御池にはキャンプ場がありますので、多少遅く着いてもなんとかなります。そんなわけで、えびの高原から高千穂河原を経て御池へと抜ける歩行距離19.7km・累積標高+1461m・-2388mをテント泊縦走の装備で1日で歩き通すことになりました。

高千穂河原を出たのは13時過ぎ。霧島古宮址の脇を抜け、鳥居の向こうに見える神話の山に登っていきます。さすがにこの時刻から登り始める人は少なく、出会う人はみな下ってくる人でした。とはいえ日没までまだ時間がありますし、落ち着いて行きましょう。

針葉樹林帯を抜けると、いかにも火山な赤茶けた岩れきの急登。ずるずる登りにくいのもお約束。これがずうっと続きます。

登りきるとそこは“御鉢”と呼ばれる火口の縁。荒々しい赤と空の青はよく似合うものです。奥に見えるのが山頂。

御鉢を抜けると鳥居があり、ここから最後の一登り。ここもなかなかの急登で、一筋縄ではいきません。でも変化があって全く飽きることはないですね。

高千穂河原から1時間と少し。天の逆鉾が立つ高千穂峰山頂です。それにしても真っ青な空!

山頂からの景色は絶品です。すっかりガスのとれた韓国岳から新燃岳・中岳・御鉢と今日歩いてきた山々を一望することができるのですからたまりません。何度見返しても良い山です。

といっても、いつまでも山頂でくつろいでいるわけにはいかないのが悲しいところ。時間の許す限りごろごろしていたいのですが、日没までに下山できるか微妙な状況では、その時間が許してくれません。現在15時、日没はだいたい17時15分。コースタイムは3時間~3時間30分。ぎりぎり間に合うかどうかという状況です。なにせ初めてのコースですから、暗くなってから歩くのだけは避けたいところ。

そんなギリギリの状況にあっても、下山路がまたこんなに魅力的とあっては、緊迫感よりも幸福感のほうが先に立ちます。西日に濃くくまどられた稜線が、おいでおいでと手招きしているようです。今日はあれだけ素敵な道を歩いたというのに、まだ終わりではないのですから、霧島連山おそるべし。

目指す御池ははるか下方。ここから先は樹林帯に入り、御池までは距離にして5km・標高差1000mを下らなければなりません。だんだん暗くなるし、見晴しは効かなくなるし、変化はないし、長いし・・・。要するに飽きてしまうんです。ここまでは楽しい道だったのに、などと詮無いことを考えながら黙々黙々と下ります。

下山口・霧島東神宮に到着したのはちょうど17時。あたりが薄暗くなり始めています。神社に下山していくというのが、なんとも神話の山らしいですが、真っ暗になる前に着いてよかった、というのが正直な感想です。だって怖いですよねえ。

ここからさらに30分。御池キャンプ場に到着したのはすっかり暗くなってから。ヘッドライトを頼りにテントをたて、今日一日よく歩いたものだと感慨に耽っているうちに、あっという間に眠りについたようです。

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