2005-07-27

登山者の"程度"

 7月22日からヒサゴ沼キャンプサイトで三泊した。よほどのもの好きでもない限り、日帰りでは行けない場所だけに、山好きにとっては憧れの場所になっている"聖地"だが、ここで見かけた登山者の行状については、一方では「やっぱり」と納得し、その一方で「いまだにこのレベルか」とガッカリした。

 登山者の"程度"を如実に示す例を以下に紹介しよう。

水場:本来の水場はキャンプサイトから10分ほど歩いた斜面にあるのだが、ことしは雪解けが遅く、キャンプサイトの近くに雪解け水を汲める流れ込みがあり、ここが臨時の水場になっている。水汲みに行ってまずガッカリしたのは、水底に米粒が沈んでいたこと。富栄養化や水質汚染の原因になるので、水場での米とぎや洗い物はしないのが、もはや山ヤの常識だと思っていたので、いまだにやっている人がいるとは思わなかった。二メートルほど下はヒサゴ沼の水面なので、洗い物をした水や米のとぎ汁は直接沼に入る。すぐ近くにはエゾサンショウウオが泳いでいるのに‥‥。

トイレ:大量のハエが元気に飛び回り、強烈なアンモニア臭がたちこめるトイレは「なんとかしてくれ」と登山者からの要望が多いらしいが、糞尿の分解の邪魔になるので「持ち帰り」が求められている使用済みの紙については、そのまま便槽に捨てていく登山者が多いようだ。

ツアー:ヒサゴ沼避難小屋は小さく狭い。利用者が不快感を感じない収容人数はせいぜい三十人程度だろう。そんな小さな小屋に十人以上のお客を連れたツアー団体が押し寄せると、小屋の中は酸欠になりそうな息苦しさだ。狭い小屋を少しでも多くの人たちが利用するには、お客さんはともかく、スタッフはテントを持参して外で寝るのが常識だと思うのだが、それもしない。小屋に早々と着いて広いスペースを確保していた個人客が"既得権"を主張し、後から来たツアー客が場所をあけろと言い、狭い小屋の中で喧嘩がはじまる。「見ったくない」光景だ。

登山道:沼からトムラウシ山へ向かうルートは地図上ではひとつしかないのだが、じつは地図に載っていない短縮ルートがある。植物帯を突っ切るこのルートは、植生保護のため現在は進入禁止になっているのだが、それを承知で利用する登山者が後を絶たない。わずか15分ほどの時間短縮なのだが、それだけのために、植生の回復をはからなくてはならない場所が踏みつけられる。そのくせ咲いている花をみると「きれい」だなんて歓声を上げるのだ。ヤレヤレ‥‥。

 書いているうちに気分が暗くなっていくのでこのへんで止めておくが、小屋利用についての登山者の意識調査のために、帯広から来ている十勝支庁の職員の方は、ここのキャンプ場にテントを張って登山者と日々接しているうちに「おなじ山登りをするものとして情けない」気持ちになると言っていた。筆者もまったく同じ感想だ。
 狭い小屋を広くしろとか、汚いトイレを立て替えろと要求する前に、自分たちの行状をすこしは振り返って欲しいものだ。

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