2006-10-28

エイリアンがやって来た

以下は、広報『ひがしかわ』11月号「大雪山の素顔」のコーナーに掲載予定の佐久間の原稿です。
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 八月の下旬、黒岳山頂付近でセイヨウオオマルハナバチが発見された。覚悟はしていたものの、危惧が現実になってしまい、大雪山はこれからどうなってしまうのだろうという不安の黒雲がモクモクと頭をもたげて来た。
 温室トマトの受粉を助ける昆虫として欧州から大量に輸入されて来たセイヨウオオマルハナバチ(以下「セイヨウ」)は、その一部がハウスを逃げ出して野生化し、いまでは北海道のほぼ全域に分布を拡大している。それのどこが問題なのか?
 植物はハチに蜜を与えるかわりに、ハチは植物の受粉を助ける。またマルハナバチは舌の長さや体の形ごとに好みの花があり、長い進化の過程で「植物との強いパートナーシップ」を、ここ大雪山で築き上げてきた。ところが外来種の「セイヨウ」がこの関係に割り込んで来た。しかも舌が短い「セイヨウ」は、花筒が長く、舌が届かない花に関しては、強いあごで蜜腺を噛み切って蜜を盗む。植物にとっては受粉をせずに蜜だけを持ち去る泥棒だ。
 北海道という恵まれた環境でのんびり育った在来種のマルハナバチは、競争の厳しい欧州で鍛えられた「セイヨウ」に駆逐され、急速に置き換わりが進んでいる。そしていま、長い時間をかけて築き上げられてきた在来種と植物との共生関係が壊されようとしてる。ただでさえ脆い大雪山の生態系が、このエイリアンの侵入でどう変わるのか、不安の種は尽きない。
 実際に参加された方も多いと思うが、東大の保全生態学研究室のグループと市民の有志によって「セイヨウ」の監視活動が、去年から東川などで行われている。興味のある方は参加してみてはいかがだろう。

大雪山マルハナバチモニタリング研究会
東京大学農学生命科学研究科 保全生態学教室
担当:菊池・加藤
ホームページ http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/alien/seiyo/seiyo_top.htm
TEL:03-5841-8915 FAX:03-5841-8916
mail:busters@cons.es.a.u-tokyo.ac.jp

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